信念に生きた芸術家・山本鼎
こんちには!予断を許さない状況ですが、だんだんとお店なども営業再開してきて、美術館にも足を運べるようになりましたね。
先日、6月より再開した上田市美術館にて、上田市美術館コレクション展Ⅰ 山本鼎-農民美術と児童自由画-という展示を見てきましたので、少しお話しようと思います。
(《楕円形平木鉢(水鳥)》のデザインが施されているパンフレット)
山本鼎(やまもと かなえ)は1882年に愛知県岡崎市に生まれ、若くして「創作版画」と呼ばれるジャンルを確立させた日本近代版画草創期の重要人物です。
上田と東京を拠点に児童自由画教育運動・農民美術運動に力を注ぎました。
小学校の図画工作の授業などで、彫刻刀を使った創作版画を体験したことがある、という方も多いのではないでしょうか。
彼のとりわけ有名な作品に、1904年発表の《漁夫》があります。
(パンフレットより引用)
この作品は日本の創作版画第一号とされています。それまでにあった浮世絵は絵師・彫師・摺師(すりし)の分業で作品を完成させるのに対し、版画は全ての工程を画家自身が行うのです。
彼が始めたこの製作は「創作版画運動」と呼ばれ、「『版』を使った絵『画』芸術」の概念が誕生しました。
本展示では、非常に多くの作品が展示されており、なかでも、《試刷林(歌舞伎座之図)》1893-1894年頃や、《セーヌ河畔の村》1913年などの作品には目が惹かれました。
写真を撮り忘れてしまったのですが、上田市美術館公式の展示レポートに掲載されていますので、ぜひこちらも見てみてください。
↓
https://www.santomyuze.com/experience_activity/report_collection1_nominbijutsu/
やったことがある方はご存知かと思いますが、彫刻刀で木を削るあの作業、かなり難しいですよね...彼の作品を見ていると、写真のように見えてくるので本当に類まれなる技術ですね...!
特に、歌舞伎座之図では、雲も非常に繊細に描き出されています。少なく削ればより黒く、多く削ればより白くなる、という版画の特徴を上手く生かし、雲の表情の違いが現れていました。
(個人的には、ニンテンドーDSにあった「うごメモ」のようだなあ...などと考えていました。笑)
山本鼎は創作版画家としても知られていますが、児童自由画教育運動や、農民美術運動を行う美術的教育運動家でもありました。
幅広い活動をした鼎ですが、
「自分が直接感じたものが尊い そこから種々の仕事が 生まれて来るものでなければならない」
という考えを生涯に渡って持ち続けました。
彼はその信念に従って生き、こうした様々な活動を行いました。
ここに、「信念に生きた芸術家」という言葉に表される、山本鼎という人物が見られます。
今回は、上田市美術館コレクション展Ⅰ 山本鼎-農民美術と児童自由画-に基づいて、山本鼎についてご紹介しました。
まだまだ触れたい点は山ほどあるのですが、長くなってきましたので今回はこの辺りで終わりにしておこうと思います。
こちらの展示は、2020年7月5日(日)まで開催されているようですので、みなさんぜひ直接足を運んでみてください!
最後まで読んで下さりありがとうございました!
参考文献
本展示パンフレット
文責・水谷